なぜ梶井は冬の蠅を見ていたのか
梶井基次郎とえば、タイトルにもある通り檸檬が有名ですが、他にも読むべき作品は多くあります。 梶井の作品を読むと、どうしてそんなものに気づくのだろうと思います。『冬の蠅』もそうでした。 冬に弱りきった蠅なんて、普通なら見つけてもすぐに忘れてしまいます。でも梶井は、日の当たる場所でかろうじて動く蠅をずっと見ています。まだ生きてはいるけれど、そのすぐ隣には死がある。蠅を見ているはずなのに、梶井自身まで重なって見えました。 梶井は若い頃から結核を患っていました。その境遇を知っているからそう見えるだけかもしれませんが、死が身近にあったからこそ、弱っていく小さな生き物や、わずかな日の光が気になったのではないかと思います。 生きようとする気持ちと、いつ死んでもおかしくないという感覚が、離れずにそこにある。『檸檬』とはまた違う、梶井基次郎のものの見方が強く残る作品でした。