もう一人の「K」の死
『こころ』にKという青年が出てくることは有名ですが、梶井基次郎の作品にも、Kと呼ばれる青年が登場することを知る人は、それほど多くないかもしれません。 二人のKに関係があるわけではないと思います。それでも、どちらも亡くなったKについて、残された人が語る物語です。読んでいるうちに、どうしても『こころ』のKを思い出しました。 ただ、『Kの昇天』に流れている空気はまったく違います。月夜の海や、月の光に照らされた影の描写がとても幻想的で、Kの死が本当にただの溺死だったのか、少し分からなくなってきます。 もしかするとKは、自分の影を追いながら、本当に月へ昇っていったのではないか。そんなことまで想像してしまう、不思議な作品でした。 とても短いのに、読み終わってからの方が物語が広がっていきます。『檸檬』しか読んだことがない人にも、梶井基次郎のもう一つの魅力としておすすめしたいです。